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フィギュアスケート男子シングルフリー@バンクーバーオリンピック。

私も、泣いた。

選手の滑りはそれぞれ個性的だ。だから自分好みの滑りの選手というのがいるのも自然なのだろうと思う。
私の場合、「芸術的」と呼ばれる滑りの選手が好みなのかなあ、と見ていて思った。そういえば古くは長野五輪銅メダルのフィリップ・キャンデロロ選手がとても好きだった。銅メダルの演技は今でも断片的に覚えている。
それでSPのときにそんな記事を書いたのかもしれない。

高橋選手の滑りは間違いなく私の好みだ。今日見た中では、ランビエール選手やウィアー選手の滑りも好きだ。それから初めて見て釘付けになってしまったのが、フランスのアモーリオ選手。曲は映画「アメリ」ほかとのことだったけれど、映画のストーリーに、曲から感じる自分なりのストーリーを重ねているようだった。解説の本田さんによればジャンプも高くて回転が速いそうで、技術も備えているようだ。さらに実力をつけて人気選手になりそうな気がしてならない。

ランビエール選手の曲は「椿姫」で、衣装は王子様のようだった。プリンスの優雅さ。スピンが本当に綺麗だった。
ウィアー選手は、ラジオの実況の方が、3連続ジャンプが2連続になったとかネガティブなことを複数回話していたので、これで高橋選手がメダルを取れそうだと勝手に安心していた。しかし映像を見てみたら…素晴らしい。衣装の白い袖が羽みたいで、ふわりと降りてきた。トリノ前あたりからいいなあと思っていて、バンクーバー前に彼を追ったドキュメンタリーを見たこともあって、ちょっと贔屓してしまう。バラの冠がよく似合う。得点が低いことに対する観客のブーイングを沈めようとする、彼の優しさにまた釘付けだった。

小塚選手はこの数ヶ月、というかバンクーバーに入ってからだけでも、めきめきと力をつけたような気がしてならない。勝手にひ弱そうなイメージも持っていたが、大舞台であれだけのびのび滑れて、初めて試合で4回転ジャンプを成功させて、というのはものすごいことだ。
守るもののできるこれからのほうが、その気持ちを持ち続けるのは大変なような気もしますが。またのびのびと実力を発揮する姿を見たいなあ。
織田選手ははじめのほうから顔が緊張しているように思えた。チャップリンの表情がどこか振り切れていないように感じた。

高橋選手の滑りには熱さがある。情熱がある。たとえばプルシェンコ選手がタンゴを滑っても、熱さというよりは大人の優美さのようなものの方が強調されていたように思えた。
そしてフリーの曲は「道」。つまづきそうになったり、悩むことがあったり、喜びがあったり。その一つ一つに、高橋選手のスケートをやってきた道のりからくる思いがこめられているのがわかった。どんな思いなのかどんなストーリーなのか、演技後にインタビューで聞かれても言葉では表せない。それは高橋選手が、それらを言語化せずにそのままスケートという形で表現したからだ。彼にはそれができるのだ。
高橋選手の思いが、熱が、スケートから伝わってきた。気付いたら泣いていた。まさか泣くとは思わなかった。

私がいまだに覚えているのが、銅メダルのキャンデロロ選手の演技であるように。
何回も先のオリンピックでまたフィギュアスケートを見たときに私が思い出すのは、間違いなくライサチェクでもプルシェンコでもなく、高橋選手のスケートなのだと思う。
間違いなく、いちばん好きな滑りだった。
by hyuri07 | 2010-02-20 02:58 | スポーツ観戦。


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