美しいギターの音色、穏やかな声、温かいハンドクラップ。
それだけでも成り立ちそうだけれど、そこに加わる電子音が、曲に奥行きを持たせ、世界を自在に広げる。
アコースティックの音の魅力は計り知れない。
だけど、鳴る音は「アコースティック」と聞いて想像する範囲から大きく離れるものにはならない。そのことに、彼の曲を聴いて気付いた。
シオザワさんはアコースティックの音に、電子音を加えた。
急に、曲の表情が多彩になる。
キラキラしたり、疾走感をまとったり、繰り返しが切なさを誘ったり。
ギターの音色は電子音と対比され、より心を揺さぶる。
これだけ美しいギターと声となら、もちろんそれだけでも成立するのだろうけれど、シオザワさんはそこにとどまらなかった。「もったいない」とも言わなかった。きっと、もっと多様な世界を表現したかったのだろう。
こんなに美しい音色が電子音に絡んでくる音楽というのは、他にそうそうないだろう。