ワールドシリーズに向けて「木更津キャッツアイ」の二回表を見直していて気になった言葉があった。
「なんか、すいません」
「なんか正直めんどくさいな」
「なんか」、なのだ。はっきり申し訳ないと思うところまではいかない。でもなんとなく申し訳ない気がする。しかし相手がそのせいで明らかに不快そうだというところまでいかない。それを付けて言われたほうが、相手がそれほど不快でなかったときにも、相手がこちらにそれほど恐縮しなくてすむ。二回繰り返されたところからも、このせりふが脚本のくどかんさん渾身の一行、または特に気に入ったものだとわかる。
二つ目にあげたせりふはよく考えるとさらに複雑だ。面倒だとは言いにくいが、正直に言ってしまえばめんどくさい。「なんか」があることで、ひどいことを言っているという印象は和らげられる。また、理由がはっきりしていないと提示することで、自分にできる解決手段はないということも同時に示している。
なぜここまで詳しく取り上げる気になったかといえば。
人生って結局なんとなくで決められていくのではないかと思ったからだ。