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はしるはしる。

ハート柄のひざ掛け。
直美「どうぞ」
山岸「あ?ああ…」
ひざ掛けを見ていた山岸、我に返る。直美がお茶をテーブルに置き、自分のデスクに戻る。領収書を書いている直美を見ている山岸の手が動く。直美が山岸を振り返り、席を立って後方に消え、戻ってくる。
直美「おたばこですか」
直美、灰皿をテーブルに置く。
山岸「あ?ああ、どうも」
山岸、胸ポケットを探る。立ち上がってパンツのポケットを前後たたく。直美、デスクに戻り引き出しから何か取り出す。
直美「どうぞ」
山岸「あ?ああ、ありがとう」
直美、新品のたばこの箱を山岸に渡す。微笑んでデスクに戻る。山岸、タバコを一本取り出してくわえ、火をつける。
山岸「たばこ吸うの?それもこんな強いの」
直美「いえ、そういうわけじゃないんですけど」
山岸、直美を見ながら口を動かすが、声が出ないまま視線をそらしてタバコを吸う。直美は黙って領収書を書き続ける。
直美、顔を上げて時計を見る。
直美「遅いですね社長。もう着いていいころなのに。電話してみましょうか」
山岸「ああ、いいよ別に」
直美「そうですか?…わかりました。何かご要望があればおっしゃってくださいね。寒くないですか?」
山岸「(そっけなく)ああ」
直美、再びデスクから立ち上がる。
直美「これよかったらどうぞ」
直美、雑誌を二冊机に置き、最中を差し出す。
山岸「…」
直美、最中を持ったまま山岸を見る。
山岸「何なんだ一体?こういたれりつくせりで!お前みたいな若い娘にこうやられたら、俺みたいなおじんは心揺さぶられるにきまっとるやろ。だいたい俺は女房に出て行かれたとこなんや。勘弁してくれよ!」
直美、山岸の目を睨むように見つめる。
直美「心揺さぶられたら駄目ですか?私が誰にでもこんなことするとお思いですか?」
山岸の表情がゆっくりと驚きに変わる。
山岸「それって…」
山岸、立ち上がり、テーブルと椅子の間から直美に向かって一歩踏み出す。
ドアの開く音。
社長「いやーごめんごめん山岸さん。事故やってて道が込んでてねえ」
満面の笑みの社長。山岸、社長に振り向く。
山岸「こんの…カス社長!」
社長「え?」
山岸、社長に撲りかかろうとする。社長は逃げようとする。直美が急いで後ろから止めにかかる。
by hyuri07 | 2008-02-17 01:40 | 文学


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