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ひとこと。

哲也と目が合う。慌てて目をそらす。哲也、首をかしげる。早苗、席のほうへ戻ってくる。再び哲也と目が合う。椅子につまづいてよろける。
哲也「あ・・・」
早苗「すみません!大丈夫です」
哲也「あ(言葉を飲み込む)」
席に座る早苗。小さく深呼吸する。早苗を見る哲也。早苗、ちらりと哲也を見る。二人の目が合う。二人、目をそらし、早苗は手元の食べ物を食べる。哲也は本に目を落とす。もう一度顔を上げてお互いを見る。哲也が微笑む。
哲也「さっき大丈夫でしたか」
早苗「さ、さっき?」
哲也「こけそうだったけど」
早苗「あ、ああ・・・。だっ大丈夫でしたよ」
哲也「そっか」
早苗「ちょっと、気をとられてて」
哲也「気を?取られてた?」
早苗「『深夜特急』が、見えたもんだから」
哲也「ああ」
哲也、手元の文庫本を持ち上げる。
哲也「お好きなんですか?」
早苗「はい。もう高校のころから何回も読んで」
哲也「そうなんだ。僕も結構読んでるよ。海外放浪まではいかないけど、旅行が好きになった」
早苗「私も。たくさんじゃないけど、たまに一人で旅に出るのがすごく楽しくて」
哲也「そうなんですか。どちらの方なんですか?僕は東京ですけど」
早苗「えっと、石川です」
哲也「そうなんだ。僕の故郷ですよ。半島のほうですか?」
by hyuri07 | 2008-03-02 23:45 | 文学


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